おまけ 天文学への応用 (1/1)


今回はおまけです。興味のある人はやってみてください。 問題を解いた人は是非提出してみてください。

第 7 回では、惑星の運動を扱いました。 そこでは、中心に点状の質量があり、 その質量のみが重力を及ぼしているという状況を扱っていました。 ここで、球対称に質量が分布している場合を考え、 ある半径 r 以内に含まれている質量を M(r) とします。 その場合、ニュートンの定理によると、半径 r にある質量 m の質点に 働く重力は、GmM(r)/r2と書けます。

半径rでの密度をρ(r)とする4πr2ρ(r)=dM(r)/dr が成り立ちますから、密度の半径依存性を決めれば、任意のrでの 重力を評価することができます。以下では、さまざまな密度分布の 例を考えてみます。ちなみに、重力potential Φと密度ρ はPoisson方程式 △Φ=4πGρで結び付いています。(球対称の場合、 。)

a) 中心天体の大きさが無視できる場合

第7回で扱った問題がこれに相当します。 この場合、密度は、Diracのデルタ関数を用いて、ρ(r)=Mδ(x)δ(y)δ (z)と書けます(Mは中心天体の質量)。この場合、質量mの質点に働く 重力はGmM/r2で、重力potentialは、-GM/r です。

b) 密度一定の場合

密度が一定で物質が分布している場合、その物質により作られる 重力ポテンシャルはどうなるかを考えてみます。 M(r)=(4π/3)ρr3なので、質量 m の質点に働く重力は (4π/3)mGρrです。

この重力場の中で円運動をしている質点の速度は v2/r = (4π/3)Gρr で、 がρ一定なので、 v は r に比例します。このような回転は、 渦巻銀河の中心付近 (バルジと呼ばれる部分) で見られます。 このような領域は多数の星 (とガスと暗黒物質) が重力場を作っていて、それぞれの星は他の星々 (とガスと暗黒物質) がつくり出す重力場中を運動しています。

c) Isochrone Potential

例えば、下のようなisochrone potentialと呼ばれる重力potential Φ(r)を考えましょう。(Mは定数)

Poisson 方程式 △Φ=4πGρ を解くと分かりますが、この重力potentialを実現するためには、 中心付近(ρ がrに比べて十分小さいところ)では密度が一定に なっていることが分かります。また、十分外側 (r が b に比べて大きなところ)ではΦは1/rに比例しますから、 十分外側では、中心にMの質点があるのと同じ重力場になります。 したがって、 このisochrone potentialは、中心付近に一定密度 のものが、スケールb程度で分布している重力potentialのモデル であるとみなすことができます。 そこで、以下のような問題をやってみてください。適当にGM=b=1な どとするといいと思います。

(1) Isochrone potential中で運動する質点の運動方程式を解き、 質点の軌道を図示せよ。

(2) 質点の単位質量あたりの全エネルギーがE (=|v|2/2 + Φ < 0) で与えられるとき、r の振動の 周期はエネルギーだけで決まる値 T=2πGM/(-2E)3/2と なることを数値計算で確認せよ。

とりあえず、ヒント無しで出しておきます。基本的には 第7回 などをヒントに、 ある程度できると思います。 完全な答えをする必要はありませんので(例えば、 運動方程式を出すだけでも結構です)、 できたところまでで出してみてください。あくまでも 今回のはおまけですが、是非挑戦してみてください。

今回は力学だけで解ける天文学の問題を出しましたが、他にも いろいろな力学や電磁気学の応用問題があります。興味がある人は 天文学の日本語の教科書がいくつかありますので是非見てみてください。また、 熱力学、統計力学、量子力学、流体力学、相対論などを勉強していくと 取り扱える宇宙の現象の幅は格段に広がります。興味がありましたら、 いつでも、研究室に質問に来てみてください。


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