第2回 振動を視覚化しよう (2/3)


1b.単振動を視覚化して理解しよう

いま求めた単振動の解を Mathematica の強力なグラフィックス機能 を利用して視覚化しましょう。楽しいだけでなく、 物理現象の理解が深まるはずです。

a)適当な数値を与えて絵を描こう

ばねの先端につけた質点を、平衡位置から x方向に 5 cm 引き伸ばし、静かに手を離したとします。x0 = 5, v0 = 0 を代入してみましょう。振動数ωは質点の質量 とばね定数 k から一意に決まる定数ですが、ここではたとえば ω=10 とおきましょう。


変数は x と t の 2つですから、先週やった2次元プロットが使えます。 横軸は時間 t で、手を離してから3秒後までの質点の運動を図示すると下のようになります。 のちほど再利用するため graph1 という名前をつけて描かせています。



x0, v0, ω をいろいろと変えることで、初期条件の与え方で運動は どう変わるのか、質点の質量 m や ばね定数 k の大小で振動はどう 変化するのかなどを、視覚的に理解することができます。 時間のある限りやってみましょう。

b)グラフィックにもこだわろう

でもせっかく視覚化するなら綺麗に出したいですよね。 パッと見て何のグラフかすぐ判るのは便利ですし、他人にプレゼンテーション するときにも説得力があります。 また、グラフの描かせ方いかんによって、新たな発見のあることさえあります。 如何に物理的な情報を計算結果から引き出せるかも、計算機物理学の 世界では重要なのです。

グラフィックスにこだわるときに使うのが Show[ ] です。graph1 を再描画させるには を入力します。前と同じグラフが得られましたか? 

Show[ ] は様々なオプションを取ることができるため、 こだわるときには重宝します。 下の例を見てください。オプションとオプションの間はカンマ(,) で区切ります。オプションを1つずつ増やしながら、その都度描画 させてみましょう。数字もいろいろ変えてみてください。



もう少しだけやってみましょう。今度は色を変えたりタイトルをつけたりし てみます。今度もオプションを1つずつ増やしながら描画させてみましょう。 数字もいろいろ変えて試してみてください。



Show[ ] が取れるこれらのオプションは他にもあります。 ヘルプブラウザを使って調べてみましょう。「組込み関数」の 「グラフィックスとサウンド」から「基礎的オプション」を選びます。

また、オプションから -> で指定されている RGBColor や Thickness は Graphics Primitives と呼ばれます。これもヘルプブラウザを使って 調べておきましょう。「グラフィックスとサウンド」から 「グラフィックスプリミティブ」を選びます。

c)位相空間も視覚化しよう

質点の運動状態は、その位置と速度(または運動量)によって記述でき ます。位置と速度を座標とする空間のことを位相空間(相空間)といい ます。 まずは関数 example を微分して速度を求めます。


* dexampleは、以前に定義したexampleと似ているために、 警告メッセージが出ますが、ここでは
気にしなくても大丈夫です。気持悪ければ、 他の変数名を使ってみてください。

これをプロットすると、以下のようになります。 1周期以上あれば充分なので範囲は 0〜1 にとります。



一見同じようなグラフですが、 位相のずれ及び縦軸のスケールの違いに注意してください。 比較のため同時にプロットするには以下のようにします。



さて、いよいよ最後に位相空間の視覚化です。横軸に座標、縦軸に座標の 一階微分をとる訳ですから、今までと同じ2次元プロットではあっても コマンドはちょっとだけ違います。まずは

と入力しましょう。この関数は読んで字のごとく、パラメータを利用して プロット範囲を指定します。2つのリストを引数に取ります。 最初のリストは描きたい関数 {x(t), y(t)}、次がパラメータの範囲指定です。 正しく入力できていれば、


こうなるはずです。パラメータの範囲を変えてやれば、質点が位相空間内 でどのように運動するかを知ることができます。





こんな具合です。このような抽象的なことほど視覚化のメリットがあります。 頭で考えるより、簡単でしょ?

次に提出してもらう課題1を簡単に説明しますが、 その前に一度セッションをセーブして終わり、新しい Mathematica Notebook を開きましょう。また、課題を始める前に、次のページ を読んでおきましょう。


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